- 2024年5月15日
- 2024年6月27日
発達障害について①
渋谷神泉こころのクリニックです。
発達障害についての診療の可否をお問い合わせいただくことも多いですので、概説したいと思います。
2005(平成17)年に施行された発達障害者支援法第二条では、発達障害は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
このように、発達障害とは、さまざまな脳機能障害の組合わせによって類型化されたものの集合です。そのため、障害の種類や程度もひとそれぞれであり、実際のところ、明確な分類や診断が困難なことも多々あります。また、年齢や環境によっては、問題視される症状が異なることもあるため、受診時の年齢や状況によって診断が変遷することも珍しくありません。
厚生労働省のHPでは、下図が例示されていましたが、ここでも各々の障害に重複があり得ることが示されています。
当院が重視しているのは、これらの障害が「脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」という点です。つまり、発達障害とは、生来的な脳機能の特性や偏倚であると考えられる点です。障害の本質が生来的なものであるとしたら、本人の自助努力によって改善しにくいところも多々含まれてきます。そのため、自助努力を過度に要求された場合、本人にとっては過剰な負担になり、自己肯定感を損ねることにつながる可能性が高まってしまいます。
そのため、発達障害の方への支援としては、生来的に不得手な部分の改善を求めるよりも、それが不利に働かないような生活の環境や構造をつくっていく方が望ましいように思います。
生来的な脳機能の特性を下図のようなレーダーチャートでとらえたとき、青い部分を拡大するよりも、赤い部分が青い部分に収まるように調整するということです。
苦手な部分を無理に克服しようと努めるだけではなく、それが不利にならないように環境を調整するという発想は、発達障害や知的障害と診断される方だけではなく、「定型発達」とされる多くの方にも有用だと思います。
ここから一歩踏み込むと、発達障害の方が働きやすい環境というのは、「定型発達」の方も働きやすいのではないかという発想も生まれてきます。具体的には、マルチタスク化しにくい業務態勢や、「空気を読む必要」の少ない(ハイコンテクストではなくローコンテクストな)就労環境の構築などが挙げられると思います。
さらに一歩踏み込むと、発達障害といわれる方の特性が有利に作用する環境という発想も生まれてきます。この特性を活用されている企業の例として、日本理化学工業株式会社が挙げられます。
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とても参考になる取組みですね。
それでは、また!