- 2024年10月29日
大麻について①
渋谷神泉こころのクリニックです。
精神科では、違法薬物を使用される方の診療機会も多々あります。
違法薬物の内訳としては、地方ですと覚せい剤が多いですが、このあたりは大麻も多い印象です。大麻は世界中で最も広く使用されている違法薬物で、2020年には、世界人口の4%にあたる約2億900万人が使用していたとされています。厚生労働省などによる統計資料でも、わが国の近年の薬物事犯の検挙者は、覚せい剤に次いで大麻によるものが多く、この二つで大半が占められています。
さて、この大麻製剤ですが、これはインド大麻(Cannnabis sativa L.)の雌花、葉、種子が原料になります。これらの浸出液を乾燥したものがマリファナ、ハシッシュなどと呼ばれ、古くから陶酔、酩酊状態を生じる物質として使用されてきました。わが国では、大麻やその精神作用を有するΔ9-テトラヒドロカンナビノールなどの成分について、大麻取締法(;大麻草やその製品)や麻薬及び向精神薬取締法(;Δ9-テトラヒドロカンナビノールなどの化学物質)で規制されています。
大麻の主な使用法は、巻煙草に封入しての吸引です。吸引した場合、数分後に多幸感が現れ、これが3時間前後持続するとされています。その際に、使用者の外部刺激に対する感受性が高まり、細部がくっきりと見える、色彩がより明るく鮮明に見える、現象がゆっくりと感じられるなどとして体験される場合もあります。しかし、その他に運動機能障害や認知機能障害も生じ、これらは10時間前後続きます。そのため、大麻吸引後に意識水準の動揺や、自動車などの運転障害を呈し、重大な事故を引き起こすこともあり得ます。
2011~2012年頃に、「脱法ハーブ」としてさまざまな化学物質が乱用されましたが、多くは合成大麻がハーブに添加されたものでした(他にカチノン系と呼ばれる覚せい剤類似の物質もありました。)。当時はこの「脱法ハーブ」の使用者が、意識障害になって救急搬送されたり、使用後に重篤な自動車事故を起こしたりして、社会問題となっていました。
時々、「大麻は危険ではない。」、「大麻を解禁すべきだ。」と主張される方々に遭遇しますが、やはり大麻やその関連製剤(Δ9-テトラヒドロカンナビノール含有製剤)が危険であることは確実で、特に重大な事故を起こして他者を傷つけてしまった場合には取り返しがつきません。
大麻を使用しながらも、どことなく後ろめたさを感じておられる方は、「なぜ大麻が解禁されないのか」と憤るのではなく、「なぜ自分が大麻を必要としてしまうのか」、「なぜ自分が大麻による酩酊を必要としてしまうのか」、「なぜ自分が大麻をつうじた人間関係を手放せないのか」などを考えてみてほしいと思います。
必要でしたら、適宜、当院にも御相談ください。
それでは、また!