• 2025年1月9日

盗撮の摘発件数の増加

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 2025年1月8日(水)の産経新聞に、盗撮の摘発件数が増加している旨の記事がありました。

 これまで、盗撮事件の捜査には、都道府県ごとの迷惑防止条例違反などが適用されていました。しかし、条例は自治体ごとに規制対象が異なる上、盗撮行為そのものを直接処罰できない場合もあり、住居侵入罪などにしか問えないケースもあったようです。また、児童の性的姿態の撮影等については児童ポルノを製造する罪で対処されていましたが、この保護の対象は児童のみであるため、その他の者が保護されないという問題もありました。

 一方で、スマートフォンや SNS の普及によって、誰でも簡単に画像や動画を得られたり、それらの投稿や配信をしたりできるようになり、盗撮等の被害件数も増加しています。

 こうした背景から、2023年7月13日から性的姿態撮影等処罰法(正式名「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」)という新しい法律が施行されました。

 これにより、盗撮と認定される範囲が明確化され、その対応も全国で統一されることになりました。概要としては、盗撮行為そのものは撮影罪、盗撮内容を保存した場合は記録罪、他者に提供した場合は提供罪として、処罰の対象になります。

 2023年までの盗撮関係の検挙件数は、並行されている自治体ごとの迷惑防止条例違反での摘発も合わせて、以下のように増加傾向です。

 もちろん、盗撮行為そのものは被害者を生む犯罪行為です。しかし、盗撮したいという衝動を制御できず、問題意識を抱えながらも盗撮を繰り返してしまうようであれば、依存症の状態になっている可能性があります。こうした方の再犯防止に向けては、処罰だけではなく、治療的な介入も必要です。当院でも、事件化した後に法律事務所から勧められて受診される方が増えておりますが、被害が拡大する前に早めに治療に取り組まれることをお勧めします。

 受診に抵抗がある場合は、まずは撮影行為の初動を封じる工夫を取り入れましょう。盗撮者の大半は、商業施設や駅構内でのエスカレーターでスマートフォンを用いて撮影しているそうです。それですので、特に高低差のある公共空間ではスマートフォンを鞄から出さないように習慣づけると良いでしょう(※)。これは、行動コストを上げる(実行までの手間数を増やす)ことで、当該行為を抑制するという方法です。

 電車内などではスマートフォンを漫然といじるのではなく、紙媒体の本を読むことも有効です。手が塞がりますし、座るよりも立つ方が読みやすいので、席を譲る動機づけにもなります。既読の本や概要を理解している本は電車内でも気軽に読めますし、文庫や新書などの小サイズの本も物理的な負担が少ないため、やはり電車内での読書に向いていると思います。これは、代替行動を確立することで、当該行為を抑制するという方法です。

 参考になれば幸いです。

 それでは、また!

(※)盗撮目的でなくとも、スマートフォンを操作しながらの歩行自体に転倒や衝突などの危険があります。また、たまたま性的対象が写りこんだことで射幸心が刺激され、盗撮にのめり込むようになった事例もあります。こうした観点からも、移動中は極力スマートフォンの操作を避けることが賢明です。

渋谷神泉こころのクリニック
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