• 2025年3月3日

「うれしいひなまつり」に登場する「フラッシャー」

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 本日は3月3日、桃の節句です。本日は、ひな人形と、厄除けの象徴とされる桃の花を飾り、ちらし寿司、ハマグリのお吸い物、ひなあられなどを楽しまれる御家庭も多いことでしょう。このイベントがひな祭りですが、この由来は、中国から伝わった五節句のひとつである「上巳(じょうし・じょうみ)の節句」です。旧暦の3月3日である上巳は3月最初の「巳の日(みのひ)」とされ、災いや穢れを払うために水で体を清めて宴を催す習わしがありました。日本に伝わったのは平安時代のようであり、現代でも各地でおこなわれている「流し雛」の原型になったと考えられています。同時期、貴族の子女の間で流行していた「ひいな遊び」(ひいな;小さくて可愛いもの、小さな人形という意味の古語。)という一種のままごと遊びが合わさり、江戸時代に入ると雛人形を家に飾る習慣が定着し、現在の形になったようです。

 この時期を象徴するもっとも有名な歌は、1935年(昭和10年)にサトウハチロー氏が作詞した「うれしいひなまつり」でしょう。本日、商業施設内で流れていたので、聞き入っていたのですが、3番の歌詞が気になってしまいました。

「うれしいひなまつり」3番;金の屏風に映る灯を 微かに揺する春の風 少し白酒 召されたか 赤いお顔の右大臣

 この右大臣、少量の飲酒で顔が紅潮したようであり、「フラッシャー」であると思われます。「フラッシャー」とは、少量の飲酒でも顔が赤くなり、眠気、動悸、嘔気、頭痛などの不快な反応を生じやすい体質の人のことで、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドの分解が遅いことを示唆します。アセトアルデヒドには細胞毒性があり、食道や咽喉での悪性腫瘍、骨髄障害による貧血や白血球減少などを生じるリスクを高めます。現代ですと、「ビールコップ1杯程度の少量の飲酒で、すぐ顔が赤くなる体質ですか?」、「初めてアルコールを飲んでから1~2年間は、顔が赤くなる体質でしたか?」のどちらかが「はい」である場合、「フラッシャー」と判定されます。

 これは、2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱い遺伝子型で、日本人の4割程度が該当します。もちろん、右大臣をはじめ、「フラッシャー」と思われる方でも、機会飲酒程度であればそれほど問題はありません。しかし、酒席が頻回であったり、飲酒量が過剰であったりする場合は、飲酒習慣を見直すことをお勧めします。

 現実的な推奨量としては、男性でビール500 ml/回以下、女性でビール350 ml/回以下、いずれも休肝日週2日以上といったところです。

 参考になれば幸いです。

 それでは、また!

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