- 2025年4月24日
新卒者の退職代行利用に関する雑感
渋谷神泉こころのクリニックです。
昨今、退職代行業者の利用が急増しているようです。今春、2025年4月23日(水)には、「退職代行モームリ」への依頼件数は77件、そのうち18名が新卒者だったそうです。また、新卒者の退職理由としては、契約内容や労働条件と勤務実態との乖離、入社前後での業務に関する印象の変化などが多いようです。

こうした退職代行業者の利用の是非や、入職後早期の退職などに対しての評価は、世代間でも異なるでしょう。特に、中高年の方(中でも採用者や人事担当者の方々)からは、やや否定的な印象をもたれる傾向があるかもしれません。私自身は、当事者の心理的な負担を軽減できるのであれば、(法的に適切な範囲内での)御利用を問題視する必要はないかと思っています。
というのも、ストレス反応が慢性化すると、心身によろしくないからです。例えば、ストレス反応の一つであるコルチゾールの分泌も、この過多が長期になると、神経細胞を損傷し、脳の一部(前頭葉や海馬など)の萎縮を呈することが知られています。つまり、心理社会的な負荷は、ストレスホルモンの分泌などを介して、身体的、器質的な損傷を引き起こし得るということです。

脳へのダメージを防ぐという観点からは、出勤に心理的抵抗が強い場合、職場から距離を置くことも必要です。とはいえ、誰しも生きていく上で、経済的な問題も避けては通れません。そのため、当面の生活費が不足していたり、転職先が未定だったりする場合などには、早急に退職を決断するよりも、一度、休職期間を挟む方が良いかもしれません。
また、そもそものストレス反応の主因が、職場での負荷の過剰ではなく、軽度のうつ病などの先行・潜行による思考力やストレス耐性などの低下である可能性もあります。

こうしたことから、心身の状態の評価や社会資源の活用に関して、退職手続きを進める前に医療機関を受診されることも有用かと思います。
お悩みの際には、お気軽に御相談ください。
それでは、また!