- 2025年5月28日
発達障害(神経発達症)について②
渋谷神泉こころのクリニックです。
発達障害について、その御家族が心身の不調を生じた状態は、「カサンドラ症候群」と呼ばれます。正式な疾患名ではありませんが、かなり広く知られているようで、「カサンドラ症候群ではないか。」と受診される方も少なくありません。この場合、御本人の発達特性を知り、それに合わせたコミュニケーションの方法や生活設計を考えることが有効です。
発達障害といっても、その中にはさまざまな類型が含まれます。そもそも疾患(障害)の概念や分類にもやや概念的で曖昧なところや、いわゆる「定型発達」と連続的なところもありますので、専門職の方でなければ厳密な区別はお勧めしません。
厚生労働省のホームページから引用した下図でも、各障害の特性に重複や境界域があることが示されています。

下図は、発達に関連するさまざまな項目を例示したものです。各項目の凹凸具合は本当に多様ですが、生活負荷がこの凹凸の範囲内に収まるようにすることが重要です。

見逃されがちな発達障害の類型に、想像力・共感性と社会的柔軟性に偏倚があるものの、その他の機能は標準以上であるという例があります。具体的には、学生や職業人としては優秀ながらも、周囲の感情に配慮することが苦手で、突発的な事態や不測の事態に対して混乱したり、問題を過度に単純化して対応したりする傾向が強いという方です。
私の周囲でみられた事例とその対応については、次のようなものがありました。婉曲的な表現が苦手で、突然のマルチタスクに混乱しやすいというところで、問題化することが多い印象ですね。
【事例①】K医師(40歳台、男性)
特定の分野の知識が豊富だが、錠剤を粉末にして1/100単位で増減するなど、治療に関してかなり細かいこだわりがある。急用が入ると激昂するため、部下はかなり気を遣っている。
➡ 急な報告や相談の際に、「お忙しいところ申し訳ありませんが……。」などの前置きが、本人をさらに不安にさせるようであった。あるとき、気を遣うことにつかれた部下が自棄的になり、「これから30分後に入院対応をお願いします。」と無造作に伝えたところ、「おう、分かった。」と快諾を得た。以降、部下らが前置きや御機嫌伺いなどの社交辞令を排し、具体的、直接的に内容を述べるようにしたところ、本人が激高する頻度が減り、関係も良好に保たれるようになった。
【事例②】O医師(50歳台、女性)
複数の業務が急に入ると、毎回のように家族の急病を理由に早退する。一見するとコミュニケーションは円滑なだけに、周囲からは「腹黒い人物」と見られやすい。研究が好きで、学術的な評価は高い。
➡ 突発的に複数の課題を提示されると、そのこと自体や優先度の判断に困惑するようであった。本人が優先的に対応すべき課題を、周囲が選別して(なるべく一つに絞って)具体的に指示することで、本人も早退することなく、円滑に対応するようになった。
一般に、男性よりも女性の方が言語能力やコミュニケーション能力が高いため、特に社会機能の高い発達障害の場合、女性の方が見落とされることが多いように思います。
参考になれば幸いです。
それでは、また!