- 2024年6月27日
- 2024年7月11日
発達障害について②
渋谷神泉こころのクリニックです。
最近、複数の知人から、「自分の子どもが発達障害ではないか」と相談されました。そもそも疾患(障害)の概念や分類にもやや概念的で曖昧なところや、いわゆる「定型発達」と連続的なところもありますので、専門職の方でなければ厳密な区別はお勧めしません。
厚生労働省のホームページから引用した下図でも、各障害の特性に重複や境界域があることが示されています。
アメリカ精神医学会が2013年に刊行した「精神障害の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、幼少期から小中学生の頃にかけて明らかになる知能、対人関係、社会的技能などの程度や偏倚による社会生活上の障害が「神経発達障害群」と総称されています。この「神経発達障害群」の中に、知的能力障害群、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、限局性学習障害、運動障害群などが含まれているという構成です。
以前の記事でも概説したように、発達障害とは、さまざまな脳機能障害の組合わせによって類型化されたものの集合です。そのため、障害の種類や程度には個人差も大きく、明確な分類や診断が困難なことも多々あります。また、年齢や環境によっては、問題視される症状が異なることもあるため、受診時の年齢や状況によって診断が変遷することも珍しくありません。
書字、読字、計算、語彙などの知的技能、共感、語音、語用などの対人交流技能、立場や状況の理解とそれに合わせた振る舞い方などの社会技能の発達そのものにも個人差が大きく、古くから認識されてきた典型的な徴候が揃っていない限り、早期に診断を確定することも困難です。
下図は、発達に関連するさまざまな項目を例示したものですが、各項目の凹凸具合は本当に多様です。
見逃されがちな発達障害(自閉症スペクトラム障害)の類型に、想像力・共感性と社会的柔軟性に偏倚があるものの、その他の機能は標準以上であるという例があります。具体的には、突発的な事態や不測の事態に混乱しやすいものの、その際にはある一つの課題に絞って順次対応する傾向があり、他者の視点に立って想像することや他者の気持ちに配慮することがやや苦手、幼少期には偏食や妙なこだわりが強かったという方です。
こうした方は、結果的に、「周囲からの期待や配慮には応えず、何かあるたびに自分のことだけを優先し、利己的で性格が悪い」という印象をもたれることがままあります。特にわが国では、雰囲気や文脈から読み取ることを求められがちな言語的・文化的特性がありますので、一見、周囲と円滑に交流できるほどのコミュニケーション能力を備えた方ほど、発達の偏倚を理解されにくく、周囲からの指示や助言にも精神論的な側面が強くなりがちです。
「悪気はなさそうだけれども、ことあるごとに周囲とトラブルになる」という方には、思い切って、直接的、具体的な助言をするのもいいかもしれません。
私自身も、こうした上司や先輩をもったことがありますので、機会があれば事例として(個人を特定されないように細部を改変した上で)紹介したいと思います。
それでは、また!