• 2024年6月26日

高校生の受診についての補足

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 前回の記事で、「処方を行う場合や状況が切迫している場合などは、御家族と情報を共有させていただくことがある」と記載しました。今回は、このことについて少し補足したいと思います。

 処方を行う場合、特に注意したいのが抗うつ薬による賦活や躁転と呼ばれる現象と、睡眠薬や抗不安薬による脱抑制や奇異反応と呼ばれる現象です。

 抗うつ薬の一部では、特に年齢の若い方で、賦活症候群と呼ばれる衝動性の亢進などがみられることがあります。賦活症候群の明確な診断基準はありませんが、FDA(アメリカ食品医薬品局)による2004年の勧告の中では、下図に示した10症状が賦活症候群の症状として列挙されています。

 また、躁うつ病(双極性感情障害)の方では、抗うつ薬によって躁状態が惹起されることがあります。いずれも、本人に明確な病感をもって完全に客観視できるものではなく、中には自分を傷つける行動に出てしまう例もみられます。躁うつ病の7割は抑うつ状態から始まるとされており、初診時点ではうつ病と躁うつ病を区別できないことも多いため、若い方に抗うつ薬を使用する際には特に慎重になる必要があります。そのため、内服後にこうした徴候がみられないかどうか、御家族とも情報を共有する必要があります。

 睡眠薬や抗不安薬も、アルコールと同様、理性による抑制を弱める可能性があり、その際に過食したり、知人に次々に電話をかけたりするなどの行為がみられることがあります。また、こうした行動を覚えていないことも多いです。抑制を弱めるという点からは脱抑制と呼ばれ、本来、眠ってしまうはずなのにかえって行動が活発になるという点からは奇異反応と呼ばれている現象です。これも、内服後の記憶が残らないまま、こうした行動に至るわけですから、御家族にもあらかじめ注意しておく必要があります。

 状況が切迫している場合とは、具体的には自殺念慮が強く、入院の必要性も高い場合などです。

 逆に言えば、ある程度冷静に診察を受けることができ、処方の必要性もない場合は、あえて御家族に御連絡差し上げることはありません。

 以上、高校生(あるいは中学生)の方などに参考になれば幸いです。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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