• 2024年6月29日
  • 2024年7月11日

発達障害について③

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 発達障害にも専門家や学術団体ごとにいろいろな細分類がありますが、最近では自閉症スペクトラム障害などのように、さまざまな要素ごとの濃淡をもって、いわゆる「定型発達」と連続するものとしてとらえる考え方が主流です。下図のようなレーダーチャート上の凹凸が発達の特性、あるいは個性であり、これらによる社会生活上の支障が強い場合に、いわゆる「障害」として支援を勧められるようになる、と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

 このレーダーチャートを作成する際に、国際的な診断基準の項目なども参考にしましたが、実際に「発達障害」として受診される方を支援する場合には、ここに示されていない項目も重要になります。

 それは何かというと、「マルチタスクの不得手」です。誰しもマルチタスク(複数作業の同時並行)は苦手なものですが、発達障害を疑われる方には、これが極端な傾向があります。WAIS-Ⅳという知能検査では、ワーキングメモリーという項目で評価される能力で、発達障害と診断される方の検査結果をみると、実際に他の項目に比して、このワーキングメモリーの得点が目立って低いことが多いです。この場合、あることをしている間に、その前に一時的に中断した作業を忘れてしまったり、全体の流れを忘れて部分的な作業に没入したりして、結果として課題を期待どおりにこなせないという結果になりがちです。

 もちろん、こうした特性を抱える本人も、長らくこうした不全感に悩まされているわけですから、各々のやり方で対策を講じている場合も多いです。例としては、「マルチタスク」を無理やり「シングルタスク」に置き換えるというものが挙げられます。課題の構成要素のうち、一部だけを抽出し、他はないものとして扱うというやり方です。複数の先輩医師にみられたやり方ですが、実例はまた次の機会に御紹介したいと思います(これは課題の与え方、仕事の振り方の問題ですので、上司の理解を深めることが解決策になると考えております。決して本人を揶揄する意図はありません。)。

 もっと早くいろいろと知りたいとお感じの方は、やや専門的ですが、広沢正孝氏の著書がとても参考になると思います(私は3回読みましたが、もう一度読み返そうと思っています。)。

Amazon.co.jp: 成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群―社会に生きる彼らの精神行動特性 : 広沢 正孝: 本

 それでは、また!

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