- 2024年9月17日
朝日新聞の「子どもへの性暴力」記事を読んでの雑感
渋谷神泉こころのクリニックです。
朝日新聞では、2019年から「子どもへの性暴力」というテーマでの不定期連載があり、私も当時から拝読しております。
2024年9月からは第10部になりますが、今回の連載は特に踏み込んだ内容になっていると感じます。心的外傷体験がその後の人生に大きく影響することに関しては精神分析学的な視点からも読み解けるようになっており、持続的エクスポージャー療法や現時点での治療提供上の課題などにも言及されていることから、もしかしたら精神科医に対する課題提示と積極的治療参加への要求というメッセージでもあるのではないかと思える内容です。
現状、こうした方々への治療に際しての大きな課題は、記事でも触れられているとおり、定型的な治療を受けるためにはかなりの時間と資金を要することでしょう。
医療機関からみても、こうした方々を積極的に診療するには、敷居が高いように思います。というのも、こうした方々への根拠のある治療法として推奨される持続エクスポージャー療法やEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)などを、マニュアルやプログラムどおりに実施するのは、治療者にとっても時間の捻出が困難であるからです。
そのため、現状では、これらの治療法の要素を抽出しながら、各々の精神科医が日々の保険診療の範囲で継続的に実践できる形に再構成する試みが妥当のように思います。
当院でも、こうした問題に対して少しでもお力になれればと研究を重ねていく所存です。
それでは、また!