• 2026年3月17日
  • 2026年3月14日

なぜ「やめたいのにやめられない」のか

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 盗撮などの問題行動について相談を受けていると、「本当はやめたいと思っているのに、なぜか繰り返してしまう」という言葉を聞くことがあります。本人としては強い後悔や反省があるにもかかわらず、同じような行動が再び起こってしまうと、「自分は意思が弱いのではないか」と感じてしまうこともあるかもしれません。

 しかし、実際には問題行動が繰り返される背景には、いくつかの心理的な仕組みが関係していると考えられています。

 一つ目は、「報酬」の影響です。
 人の行動は、何らかの形で快感や安心感、刺激などの「報酬」を伴うと繰り返されやすくなります。たとえ冷静になって振り返った際に後悔するような行動であっても、その瞬間には強い達成感や、持続的な緊張からの解放感などを生じることがあります(行動分析学では、前者による行動の増加を「好子出現による強化」、後者を「嫌子消失による強化」と呼びます。)。その経験が記憶に残ると、似た状況で同じ行動をとる可能性が高まることがあります。

 二つ目は、「習慣化」の影響です。
 同じ行動を繰り返していると、特定の状況と行動が結びつきやすくなります。例えば、特定の場所や時間帯、あるいはストレスを感じているときなど、似たような状況に置かれると自動的に行動が起こりやすくなることがあります。このような状態になると、本人の意識とは関係なく行動が生じているように感じられることもあります。
 行動分析学的には、駅や階段など「盗撮をしたくなる状況」を「弁別刺激」、ストレスを感じ、その解消を強く求めているなど「より盗撮をしたくなる状態になること」を「確立操作」(遮断化)と表現されるかと思います。

 三つ目は、「衝動」の性質です。
 衝動は一時的に強くなることがありますが、一定の時間が経つと弱まっていくことも多いと言われています。しかし、衝動が強くなった瞬間に行動へ移ってしまうと、その行動がさらに習慣として強化されることがあります。特に、必要な手間、時間、労力、心理的負担の少ない行動は、衝動の発生から行動に移すまでのハードルが低いため、注意が必要です。

 このように考えると、「やめたいのにやめられない」という状態は、単に意思の弱さだけで説明できるものではなく、行動の機能、状況、衝動などのさまざまな因子が重なって生じていることが多いと考えられます。

 そのため、問題行動への対処では「気合い」や「我慢」だけに頼るのではなく、行動のきっかけを整理したり、生活環境を整えたり、代替となる行動を準備したりすることが重要になります。衝動が生じやすい状況を理解し、行動の環境を調整することで、再発を防ぐための工夫を積み重ねていくことができます。

 問題行動について悩んでいる場合には、一人で抱え込まず、医療機関等での御相談の下、客観的に状況を整理していくことが有効な場合もあります。

 参考になれば幸いです。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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