• 2024年4月20日
  • 2024年5月22日

うつ病について①

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 今回はうつ病について概説したいと思います。

 最近では、抑うつ的な状態が一定期間続いたものをうつ病と診断することが一般的になってきました。これには、米国精神医学会によるDSM-5や世界保健機関によるICD-10といった診断基準が用いられています。

 しかし、こうした診断法では病因には注目していないため、治療法の選択は別に種々の病因を想定する必要があります。

 うつ病と診断される状態を生じた原因としては、重責、人間関係の不和、不遇な生活環境といった心理社会的なものもあれば、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質の機能不全といった生物学的なものも考えられます。

 特に軽症の場合には、生物学的な問題によって生じたうつ病であっても、ストレス反応の一種にみえることがあり、注意が必要です。

 高名な精神科医である笠原嘉氏は、これを「うつ病による精神的なエネルギー水準の低下に起因する、心理的な葛藤の二次的露呈」といった概念で説明しています(表現は一般の方に分かりやすいように少し変更してあります。)。精神的なエネルギー量をダムの水位に見立て、それが減ってくるにしたがって、普段は問題なくこなせていたことが徐々に難しくなってくる、といった意味になります。

 このように、生物学的な原因で精神的なエネルギーが低下してきている場合もありますので、抗うつ薬を試用して、その反応と経過を加味しなければ、適切な診断や治療ができないこともあります。

 ちなみに、微小妄想とは「うつ病による悲観的、自責的な解釈が極度に強まったことで生じる心気的、罪業的、貧困的な内容の妄想」、亜昏迷とは「幻覚妄想などの病的体験の影響や、うつ病などのエネルギーの枯渇によって、ほとんど身動きや疏通がとれなくなった状態」といった意味の用語です。

 落ち込んでいる人に対して、「単なる気合の問題だ。」などと決めつけることは適切ではありませんし、やはり治療への反応や経過をみてみなければ診断もなかなか確定できないものです。

 それですので、皆様もお困りのことがありましたら、まずはお気軽に御相談いただければと思います。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
03-6427-0555 ホームページ