• 2024年5月29日
  • 2024年5月30日

育児のお悩みについて③

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 さまざまな御相談を受ける中、育児に関する悩みが尽きないことを改めて実感しておりますが、当院では、基本的には「子どもは天才である」という姿勢で臨むことをお勧めしております。つまり、「養育者がすべて管理しなくては、子どもがまともに育たない」という考えであれば、それを手放すことをお勧めしております。

 お子様のことを心配されるあまり、過保護・過干渉になってしまうこともあるかと思いますが、これはお子様からすると「常に監視されている」、「常に減点評価の対象にされている」と受け止められる可能性があります。こうなると、お子様の行動選択の基準が、他者から評価されること(叱責されないこと)、短期的な失敗を回避できることになりがちです。この場合、好奇心の発露や興味の対象への没頭といった、自身の感情や感覚にもとづく活き活きとした気持ちでの行動が難しくなってしまいます。

 養育者としては、お子様自身の感情や感覚を否定したり、抑圧したりするのではなく、それらを言葉で同定したり肯定したりすると良いのではないでしょうか。これにより、お子様もこうした感情や感覚を言葉で表現でき、他者と共有できるようになるからです。 

 「語彙力こそが教養である」というタイトルの本があります。著者はかなりの教養人であり、内容からは語彙に乏しい方をやや軽蔑したニュアンスも感じられます。

語彙力こそが教養である (角川新書) | 齋藤 孝 |本 | 通販 | Amazon

 しかし、語彙力は、感情を爆発させたり、行動化したりせずに、他者と言葉でやりとりする力につながります。そのため、同書のタイトルにも大きくうなずけるところがあります。

 語彙力を伸ばす方法として、石井勲氏は、文字を絵としてとらえることを勧めています。同氏のさまざまな著書で一貫して訴えられていることとしては、「抽象性の高いひらがなよりも、具体性の高い漢字のほうが覚えやすい」(英語などの表音文字の場合は、文字よりも単語のほうが覚えやすい)、「書字よりも読字のほうが難度の高い言葉を扱えるため、まずは書けなくても読めれば良い」といったものです。
 また、その中で、知的障害のある児童について、漢字から教えることで語彙力が伸び、言葉でのやりとりができるようになった分、情動が安定し、粗暴な行為で不安を訴えることも減ったといった事例も紹介されていました。

幼児はみんな天才: 石井式漢字早教育のすすめ | 石井 勲 |本 | 通販 | Amazon

 とはいえ、言葉を習得する際の動機の一部に、お子様自身の「この感覚を伝えたい」といった気持ちがあることは言うまでもありません。それには、養育者にも、お子様自身のお気持ちを十分に発露させ、それを尊重する姿勢が求められます。

 「角を矯めて牛を殺す」ことにならないためには、お子様を楽観的、肯定的にとらえることが必要ですし、そちらの方が養育者にとってもお子様にとっても、楽なのではないかと思います。

 何かお悩みのことがありましたら、当院にも是非お気軽に御相談ください。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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