• 2024年7月2日

パーソナリティ障害について③

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 クロニンジャーの「気質と性格の7次元モデル」についての続きです。

 クロニンジャーの理論における「気質」とは、幼年期からみられる遺伝的な要素で、認知記憶や習慣形成の際などの無意識的な傾向として顕在化します。一方、「性格」とは、成長とともに徐々に形成される後天的な要素で、自己、他者、社会に関する洞察や関与の方向性に影響します。

 「気質」は、さまざまな脳内の神経伝達物質やその受容体の多寡で、その特性が形作られると考えられています。主な神経伝達物質としては、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどが想定されていますが、「固執」に強く関与するものはあまり明確ではないようです。個人的には、自閉症スペクトラムなどの発達の要素が大きいように思いますが、いずれにしても、遺伝的、先天的な影響が強いということになります。

 「性格」は、環境をつうじたさまざまな経験や洞察などで後天的に形成されると考えられています。これも、大きくは自己認識、他者への配慮、人生をつうじた社会(世界)への関与に分類されており、各々の要素を適切に伸ばすためには、周囲からの支援が欠かせません。

 「気質」は、何に対して興味をもち、どのような行動をとるのかに影響し、「性格」はこうした興味や行動の意味を自己、他者、社会との関係の中でどのように意味づけていくのかに影響するといえるでしょう。一人一人、遺伝的にも環境的にも条件が異なり、そこには多様性がありますので、養育や教育に絶対的な正解がないというのもうなずける話です。

 最近、育児や養育に関する御相談をいただくことも多いのですが、まずはお子様それぞれの個性をとらえることから始めてみると良いのではないかと思います。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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