• 2024年7月23日

「柔道部物語」での「跨ぎ十字」

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 もうすぐパリ五輪が始まりますね!

 個人的には、柔道の阿部兄妹の同日五輪二連覇達成の成否に注目しております。

 さて、柔道といえば、五輪を三連覇した野村忠宏選手が有名ですが、その分水嶺の一つとなったのが1996年のアトランタ五輪60 kg 級三回戦、ニコライ・オジェギン選手(ロシア)との試合でしょう。当時は格上とされていたオジェギン選手の圧力に苦戦する中、野村選手は試合終盤で釣手だけでの背負投げを繰り出し、引手で相手の脚をつかみながら回転させる変則技で技ありを奪いました。

 後日、野村選手は、「柔道部物語」という漫画について、「その影響で片襟の背負投をすごく練習していた。」、「そのおかげで試合でもこの技が出た。」といった内容を述べられていました。

 たしかに作中では、釣手だけでの片手背負いは何度も出てきますし、背負投ではなく袖釣込腰でしたが、技に入った後に脚を掴んで投げるという工夫も終盤でみられます。

 この野村選手のエピソードは柔道愛好者間でかなり有名ですが、「柔道部物語」にはもう一つ、五輪で実現された独特の技があります。それが作中でライバル西野新二が繰り出した、一本背負いへのカウンターとしての「跨ぎ十字」です。

 当時はあり得ないと思っていましたが、2012年のロンドン五輪73 kg 級決勝戦、中矢力選手とマンスール・イサエフ選手(ロシア)との試合で再現されました。中矢選手が繰り出した両袖をもっての右の低い背負投に対して、イサエフ選手は中矢選手の右肩を跨ぎながら、寝技で言うところの「ヤスケビッチ式」の腕十字を空中で仕掛けます。

 一瞬のことで、何度スローで見直しても信じられないほど鮮やかな入り方でした!試合終了後の両手を広げた勝利のアピールには、やや非難が集まりましたが、中矢選手得意の寝技も凌ぐなど、その試合運びには確かなものがありました。

 ちなみに、「ヤスケビッチ式」の元祖はアレクサンダー・ヤスケビッチ氏で、以下の書籍でも腕十字の入り方について解説されていましたが、現在では入手困難のようです。

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 「想像できることは、必ず実現できる」というジュール・ヴェルヌの言葉や、「常軌を逸したビジョンをいつの間にか〈単なる大幅な遅れ〉に変えてしまう」というイーロン・マスク氏の経営手腕を表した言葉のとおり、何事もまずは目標を達成した状態を想像してみることが重要ですね!

 それでは、また!

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