• 2024年7月26日

セーヌ川と多摩川からみる環境問題

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 今宵、パリ五輪の開会式がセーヌ川で開催されるそうです。

 このセーヌ川では、トライアスロンのスイムやオープンウォーターが実施される予定ですが、水質の安全性に疑念をもたれているようです。セーヌ川は、水質汚染と健康問題を理由に、1923年から遊泳が禁じられてきました。今回、パリ市は浄化対策として14億ユーロ(約2300億円)もの資金が投入されましたが、依然として河水からは大腸菌が大量に検出されているようです。7月17日、パリのイダルゴ市長がセーヌ川を泳いで安全性をアピールしましたが、水質は天候や気温によって動揺するため、競技当日の水質への懸念は払拭されておりません。

 わが国でも、高度経済成長期(1955(昭和30)年から1973(昭和48)年あたり)には環境汚染が進み、全国で大気汚染や水質汚染などの公害が激化しました。近年では、大量ながら一時的な産業排水ではなく、少量ながら恒常的な生活排水が河川の水質汚染の最大の原因となっています。

 このように、人間の活動範囲にある河川は、常に水質汚染の危機に曝されています。

 東京圏の代表的な河川である多摩川についても、高度経済成長期には、川面が油膜や洗剤の泡で覆われ、魚からはシャンプーの香りがするとまで言われていました。しかし、その後の水質改善の取組みで、1980年頃からは鮎の遡上が確認され、近年では、清流の代表格である四万十川の水質に迫るまでになりました。

 これはひとえに下水処理の整備によるものですが、反面、常にきれいで温かい排水が流れ込むため、現在は南国由来の熱帯魚や外来魚が繁殖するなど、生態系の問題を生じています(ペットとして購入した外来種を放流する方が発端のようです。)。

 せっかくの夏季休暇中ですので、東京圏にお住いの小中学生の皆様には、以下の書籍をお勧めしたいと思います。

タマゾン川 多摩川でいのちを考える | 山崎充哲 |本 | 通販 | Amazon

 河川の水質改善のための取組みだけでなく、水質を維持するための設備や電気代のコスト、それに伴って生じる河川環境の変化、外来種の放流を軸とした生態系や生命倫理に関する問題提起など、多摩川をさまざまな視点から眺められる良書です。読書感想文の素材にしていただければ幸いです。

 それでは、また!

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