- 2024年7月31日
小学生に向けた図書の紹介と貧困問題について
渋谷神泉こころのクリニックです。
本日で7月も終わりますね。この時期になると、徐々に日が短くなってきていることを実感します。
小学生の皆様にとっては、そろそろ読書感想文にも手をつけようかといった時期でしょうか。
私は最近、2024年7月24日(水)の産経新聞で紹介された「八月のひかり」(中島信子著、汐文社、2019年6月)を読みました。一人親の家庭に育つ小学五年生の美貴の視点から、食事や勉強を題材に一家の夏休みを描いた物語です。
八月のひかり | 中島 信子 |本 | 通販 | Amazon
美貴とその弟の2子を育てる母は、十分な収入を得ることができず、一家は常に困窮しています。物語の端々で、この経済的な制約、いわゆる「貧困」が、美貴たちの発育や学校での人間関係にどのような影響を及ぼしていくのかも描写されています。
漢字にはルビが振られており、分量も適度なため、小学生にも読みやすい作品です。
ただし、全体的に清貧を美化する雰囲気が漂い、一部に生活保護などの公的扶助に否定的な描写もみられます。そのため、この作品に過度に感化されると、「どのような境遇であっても自助努力のみで人生を切り開かなければならない」といった考えにつながる危険性があります。
このような場合、以下のような書籍を合わせて読むことをお勧めします(中学生向けで、ルビは少ないのですが、紹介されている事例は小学生でも十分に理解可能です。)。
学校では教えてくれない生活保護 (14歳の世渡り術) | 雨宮 処凛 |本 | 通販 | Amazon
また、ニュージーランドの漫画家である Toby Morris 氏の「ON A PLATE」という作品も一読の価値があります(以下のサイトでも解説が読めます。)。
「ふたりの人生は、何がちがったの?」。格差社会にメッセージを投げた漫画 | TABI LABO (tabi-labo.com)
夏休み中に宿題が捗らない小学生の方の参考になれば幸いです。
もちろん、当院での受診時に読書感想文などのを御相談をいただいても問題ありません。診療時間中であれば、紹介した図書はお貸しできますし、待合室で感想文を書いていただいても結構です(冷房も効いていますしね。)。夏季休暇中ですと、担任の先生に相談できる機会も限られますので、こうした部分でも何かお力になることができれば嬉しく思います。
それでは、また!