• 2024年8月15日
  • 2024年8月24日

生活を整えることについて

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 学生の方は、夏季休暇の時期ですが、中には生活がかなり不規則になってきている方もいらっしゃるかと思います。また、社会人の方にも、残業や夜更かしなどで就床時刻が不規則になりがちな方が散見されます。

 「生活が不規則になるのは、自分の意志が弱いせいだ。」とお考えになる方も一定数いらっしゃるかと思いますが、実際には毎日の行動の40%以上は「その場の決定」ではなく「習慣」によるもののようです。そのため、生活を整えるためには、意志だけではなく、習慣にも注目する必要があります。

 「習慣の力」(チャールズ・デュヒッグ著、早川書房、2019年)では、習慣を生み出し、維持するメカニズムを、ある欲求を前提に、あるきっかけから、ある行動(ルーチン)をとったときに、ある報酬が得られるというループであると説明しています。

 以下はアルコール依存症を例にした図で、左側は「寂寥や落胆をきっかけに、飲酒というルーチンで、安堵感という報酬を得る。」という習慣のループ、右側は「寂寥や落胆をきっかけに、自助グループでの対人交流というルーチンで、安堵感という報酬を得る。」という習慣のループです。

 行動分析学や行動療法とも共通する考え方ですが、行動を変えていくためには、その行動の是非善悪よりも、機能に注目し、同様の機能をもつ別の行動で置き換えていくという発想が強調されています。下図にお示しするとおり、一般的な行動分析学では、好子(良いこと)出現か、嫌子(悪いこと)消失によって、その行動が強化される(増える)と説明されています。同書では好子出現による強化が特に重視されています。上図の飲酒に関する例でも、安堵感の出現だけではなく、寂寥感や孤独感の消失という機能も併存しているとは思いますが、嫌子消失よりも好子出現の方が行動強化機能が高いということなのでしょう。

 また、同書では、こうした行動変容や習慣形成の際には、複数のことに取り組むよりも、「要となる習慣(キーストーン・ハビット)」という一つの習慣に狙いを定める方が有効であることが強調されています。キーストーン・ハビットは、それに付随する他の習慣を定着させる足場になるからです。

 こうした知識の実践として、まずは毎日同じ時刻に就床し、同じ時刻に起床することから始めてみるのが良いと思います。また、夜勤や交代制勤務で仕事が不規則な場合にも、日勤バージョンと夜勤バージョンの二つの生活パターンを定めておけば、習慣化しやすいと思います。

 必要な睡眠時間を確保した上での規則的な生活は、心身ともにそのリズムに乗ることができ、自然に体が動くようになり、課題や業務も計画的にこなせるようになりますのでオススメです。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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