- 2025年7月8日
盗撮が性嗜好障害に至る心理
渋谷神泉こころのクリニックです。
夏季の暑熱から軽装の方が増えたこともあり、盗撮に関する御相談も増えてきました。
当院を受診された方々に関する盗撮の対象、手段、場面などの印象は次のとおりです。
盗撮の対象は、女性の下着がほとんどです。
盗撮の手段は、スマートフォンがほとんどです。時折、靴の先端や鞄の中などに撮影機器を仕込まれる方もいましたが、少数です。
盗撮の場面は、最も多いのが駅構内のエスカレーター、次いで混雑した電車内です。商業施設の構内にも長いエスカレーターがありますが、駅構内の方が匿名性や流動性が高いためか、それほど多くない印象です。中には女性専用トイレに侵入し、戸の隙間からスマートフォンを差し込んで盗撮を敢行、そのまま逃亡するという方もいました。
さて、盗撮は、一度成功するとやめられなくなり、何度も反復してしまうことが通常です。最初の盗撮は罪悪感を伴うことが多いですが、これが「認知的不協和」という一種の葛藤を生じます。そして、この「認知的不協和」を解消するために、盗撮を正当化(矮小化)する歪んだ認識が生み出され、さらなる盗撮を重ねてしまうことになります。

また、盗撮が習慣化すると「損失回避」の心理も作用し、盗撮できるのに盗撮しないことが苦痛になってきます。この「損失回避」については、「ノルウェイの森」(村上春樹著、講談社、2004年9月)にある「永沢さん」の(不特定多数の女性との性行為が習慣化していることに関する)以下の発言が参考になります。
「ほら、ドストエフスキーが賭博について書いたものがあったろう?あれと同じだよ。つまりさ、可能性がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通りすぎるというのは大変にむずかしいことなんだ。」
「そういう可能性が目の前に転がっていて、それをみすみすやりすごせるか?自分に能力があって、その能力を発揮できる場があって、お前は黙って通りすぎるかい?」
盗撮は一度でも行うと、容易に習慣化し、あっという間に自制が困難な性嗜好障害の水準にまで至ってしまいます。それなので、盗撮を繰り返されている方は、いたずらに被害者を増やす前に、早期に専門機関に御相談いただくことをお勧めします。
それでは、また!