- 2024年5月14日
HSP・AC・ACEなどについて
渋谷神泉こころのクリニックです。
最近、「自分はHSPなのではないか。」との御相談を受けることが増えてきました。
HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略語であり、「生来的に感受性が非常に強い人」を意味します。
似たような特徴をもった方を指す他の概念で、ACという言葉もあります。これは、「Adult Children(アダルトチルドレン)」の略語で、機能不全家族で生育した成人を意味します。HSPとの相違は、その気質が先天的なものであったのか、環境によって形成されたものなのかという点にあります。
ACとは、本来は「Adlut Children of Alcoholism(ACoA)」といって、アルコール依存症の養育者がいる家庭で育った成人を意味していました(子供のうちは「Children of Alcoholism(CoA)」です。)。しかし、次第にその他の原因による家族機能の不全下で育った成人を指すようになり(「Adlut Children of Dysfunction family」)、現在ではそれらを区別せずにACと一括されるようになりました。
このように、ACという言葉は、それ自体が「機能不全家族が背景にある」という因果関係を含んでいます。そのために、過度に家族が責められたり、家族との対立を招いたりすることもあったようです。
その点、HSPという概念は、受診される方が生来的にHSPなのかどうかは別として、生育環境を不問にしている点で、少し受け入れやすいのかもしれません。
そのせいか、2010年代前半では「自分はACではないか。」との御相談が多かったのですが、最近ではACを耳にすることは激減し、冒頭のようにHSPに取って代わられた印象です。余談ですが、その過渡期には「自分は自閉症スペクトラムではないか。」との御相談が多かった気がします。
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機能不全家族の類語として、最近では逆境的小児期体験 「Adverse Childhood Experience(ACE)」という言葉も普及してきました。ただし、この逆境的な体験内容の例も、家庭内のものが多く、機能不全家族と重複が大きいように思います。
また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関して、日常的な外傷体験の反復や蓄積によって生じる「複雑性PTSD」という概念が徐々に知られるようになってきました。ただし、この心的外傷体験の例も、家庭内のものが多く、機能不全家族との重複が大きいように思います。
逆境的体験、あるいは、日常的に反復される心的外傷体験には、学校でのいじめや通学中の痴漢被害など、家庭外のものも挙げられると思います。こうした体験の結果、自己肯定感、自尊心、楽観性などが損なわれ、ACのような特性やPTSDに該当する症状を呈することもあるわけですから、さまざまな言葉はあるものの、臨床上は語義に囚われ過ぎないことも重要です。
こうしたお悩みをおもちの方は、一人で抱え込むよりも、一度お気軽に御相談いただければと思います。
それでは、また!