• 2024年7月18日

「青年養老院」と「24時間戦えますか?」

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 本日(令和6年7月18日(木))の産経新聞に、中国で「青年養老院」と呼ばれる民間施設が各地に出現しているという記事がありました。

 施設の大半は、都市部周辺の田園地帯や丘陵地帯にある廃棄された古い建物を再利用したもので、年齢制限は45歳以下、入居料金は月額 33,000円程度、入居者のほとんどは20~30歳台の若者とのことです。そして、これらの入居者は、職場や親族関係などの実社会と事実上断絶しながら、必要最低限の費用で「老後」のような消極的で自適な生活を送っているそうです。「寝そべり族」の集団化のような現象です。競争が激化する現代社会の重圧下で、未来への希望をもてない閉塞感が、こうした一種の逃避的な生活様式として顕在化しているのでしょう。わが国も他人事ではありません。

 とはいえ、その対極にある「24時間戦えますか?」(1989年に流れた滋養強壮ドリンクの広告歌詞)という社会が健全とも思えません。当時の日本経済は強かったものの、今振り返ると、こうした「企業戦士」の家庭にはかなりの無理がかかっていたようにも感じられるからです。

 作家の佐藤優氏は、「獄中記」の中で以下のような西村尚芳検事の発言を紹介しています。

「あなたはやりすぎたんだ。」

「そういう人たちは、世間一般の基準からするとどこかで無理をしている。だから揺さぶれば必ず何かでてくる。」

 もちろん、健康や家庭よりも仕事にすべてを懸ける生き方も否定されるものではありません。人生の中で、そうしなければならない時期や状況もあると思います。

 しかし、時間と体力は有限です。現在の生き方が、中長期的に、少なくとも年単位で続けられるものなのかどうかも、折に触れて検討する必要があるでしょう。

 「青年養老院」と「24時間戦えますか?」は対照的な生き方ですが、それを両極に置くことで、適度な生き方や価値観が見えてくるかもしれませんね。

 それでは、また!

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