- 2024年7月29日
- 2024年8月5日
パリ五輪に関する雑感①
渋谷神泉こころのクリニックです。
パリ五輪が開催され、早くもさまざまなドラマが生み出されていますね。
私は柔道を就寝に支障のない範囲で観ています。柔道は、わが国発祥の武道であるという点で、毎回、さまざまな主張や思惑が活発に議論されている印象です。
とはいえ、様式美、実戦性、競技性、精神性など、さまざまな要素を万人が満足できるように調整することはできません。また、より大きな視野から眺めると、より多くの視聴者から競技そのものへの関心をもってもらえなければ、五輪競技としての存続すら危ぶまれます(2013年、レスリングも五輪から除外されそうになりました。)。
こうしたさまざまな事情が競技にどのような影響を与えるのかは、以下の書籍で詳細に解説されています。特に第1章で紹介された「こんな試合を続けていたら観客が集まらないし、スポンサーも付かない」というリオ世界選手権後の国際柔道連盟理事会での上村春樹理事の発言は、柔道にも商業主義的な視点が求められているという事実を突きつけられるようで、衝撃的です。
蘇れ!柔道最強説 BABジャパン出版局 (hiden-shop.jp)
ところで、今回の男子60 kg 級でみられた「審判の「待て」後の失神問題」の発端となった「袖車」ですが、2002年8月28日、国立競技場で開催された「Dynamite!」でも、吉田英彦選手がホイス・グレイシー選手にかけていましたね。
ちなみに、その際には、ホイス選手の瞬間的な失神により、試合が止められ、吉田選手の勝利が確定しました。ただし、その直後にホイス選手が覚醒したため、ホイス陣営から審判に苦情が寄せられました。故古賀稔彦氏は、この袖車による決着を「予想した通り、吉田の楽勝だった。」、「袖車は柔道技だが、相当の力量差がないと決まらないものだ。」と評価し、吉田陣営も「不服があるとしても、同じ体勢から再開すればどのみち結果は同じになる」旨を述べていました。
昨今の国際柔道においては、立ち技に関する頻回のルール変更に対して、寝技の強化によって競技力の安定を図る傾向が強まってきています。また、ブラジリアン柔術の流行もあり、袖車も以前よりも多くの入り方が開発されてきているため、今後、目にする機会が増えていくのかもしれません。ちなみに、寝技技術の解説や指導については、個人的には岩崎正寛氏がとても優れていると感じております。
Masahiro Iwasaki Ezekiel Choke (youtube.com)
話がかなり脱線してしまいましたが、柔道競技ひとつとっても、そこにはさまざまな立場に置かれた選手や関係者があるため、一方的な非難や断罪は適切ではないと思います。特に、スペイン代表のフランシスコ・ガリゴス選手に対して殺到したとされる「不快なメッセージ」に関しては、もしも行為の主体が逆であったとしたら、同じような反応になったのかどうか疑問です。
各々の立場、価値観、内在論理などを理解することが、日常生活のさまざまな面でも大切ですね。
それでは、また!