- 2025年3月27日
うつ病の薬物治療について
渋谷神泉こころのクリニックです。
うつ病の暫定診断で、抗うつ薬による薬物治療を行う場合の大まかな流れを、以下の図にまとめてみました。なお、ここで、暫定診断としているのは、経過や薬物治療への反応によっては、診断が双極性障害や統合失調症などに変更される場合があるためです。

軽度から中等度のうつ病の場合には、さまざまな抗うつ薬の有効性に、有意差はないとされています。また、最初の抗うつ薬の試用では、約30%の方で効果が不十分であったり、副作用が強かったりして、満足のいく結果を得られないとされています。こうした知見から、特別の情報(抗うつ薬の内服歴やその反応など)がない限り、最初に試用する抗うつ薬は、副作用が少なく、作用機序が複雑ではないものが選択されます。
副作用が多く、作用機序が複雑な抗うつ薬の代表が、古くから使用されていた三環系抗うつ薬(;アミトリプチリン、イミプラミン、アモキサピンなど)です。これらは、抗うつ効果は新規抗うつ薬よりも強いものの、副作用として、アセチルコリンの機能の抑制による口渇、便秘、認知機能への影響などの他、一部にドーパミンの機能の抑制による振戦、固縮、アカシジアなどを呈することがあります。
抗うつ薬の開始後、最初の1~2週間は、①抗うつ薬による改善の兆候がみられるかどうか、②内服の継続が困難な副作用がないかどうか、③双極性障害を疑う(;抗うつ薬を中止し、主剤を気分安定薬などに変更すべき)反応がないかどうかを観察します。
通常、抗うつ薬の効果は3~4週間かけて徐々に得られるため、それくらいの間隔で用量を調整します。Nierenberg らによる研究では、SSRIという種類の抗うつ薬の内服開始後、少しでも効果を感じ始めた人の割合は、2週間で約50%、4週間で約80%、6週間で約90%であったと報告されています。薬剤選択が妥当であったとしても、効果判定には相応の期間を要するということです。
十分な回復が得られた場合、再発予防として、初回であれば約1年間、2回目であれば最低2年以上、同量での服薬を継続します。ちなみに、回復直後に服薬を中断した場合、約50%が3~6か月以内に再発するとされています。
なお、上図にある「増強」という言葉についてですが、うつ病の診断下に抗うつ薬ではない向精神薬(炭酸リチウムやアリピプラゾールなど)を併用するという意味になります。
参考になれば幸いです。
それでは、また!