• 2024年5月28日
  • 2024年5月29日

育児のお悩みについて②

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 東京圏で診療していると、全国的に有名な進学校の生徒さんが受診されることもあります。

 大半が、幼少期から神童とされ、学業に邁進されてきた方々なのですが、中学高校あたりから不登校になったり、登校すると体調不良を起こしたりして、受診されるという経緯です。

 本人が好きで勉強している分には良いのですが、これが幼少期から強要されるものになると、燃え尽き症候群や過度の能力主義、成果主義に陥る可能性があり、注意が必要です。

 「そうはいっても、人生台無しになったら困るじゃないか!」などと御批判される向きもあるかと思いますが、これからの時代、過度の詰込みが不利に作用する可能性もあるかと思います。
 そもそも、初等教育や中等教育で学ぶことは、基本的には過去の知識体系です。もちろん、とても重要なことですが、その体系内での「正解」が決められているため、そこでの成績に囚われすぎると「ミスが少ないこと」を重視する傾向が出てきます。つまり、「100点でないと許せない。」、「90点は0点と同じ。」といった発想です。こうなると、失敗や批判を恐れて、何かに挑戦することができなくなってしまいます。

 小松秀樹氏は、著書「医療の限界」の中で、「現在の医師国家試験は基本的に記憶量を測定するものですが、医学の進歩は早く、正しかったはずの情報もすぐに入れ替わる。極端な言い方ですが、成績の上位2~3%に入ることは、それだけで将来の指導者たる資質がないとさえ思います。ひたすらに記憶量を増やす努力を続けられるということは、何が重要かを自分で判断する能力がないためではないでしょうか。」(同著131頁)と述べます。
 私が言ったら袋叩きにされそうな内容ですが、要するに、過去の知識をありがたがって詰め込むばかりでは、変化への適応や新たな進展が得られないということでしょう。また、既存の知識や前例などに囚われ、「自分が考えていることを自分の責任で決定」(同著130頁)できなくなることも懸念されていりようです。

Amazon.co.jp: 医療の限界 (新潮新書 218) : 小松秀樹: 本

 後者の部分は、赤木しげる氏の「俺は…たとえ勝つにしろ 負けるにしろ 赤木しげるとして勝ち 負けたいのだ…」(福本伸行『天』第88話「訣別」より)という発言につうじるものがありますね。

 ともかく、育児に関しては、発達、発育、成績などに執着せずに、一定の「余裕」や「あそび」をもうけ、さまざまなことに楽観的に挑戦できる環境を整えるということが重要です。この点については、「ほめて抱きしめれば天才になる」(金子文雄著)がとても参考になります。

Amazon.co.jp: ほめて抱きしめれば天才になる : 金子 文雄: 本

 何かお悩みの際には、当院にも是非お気軽に御相談ください。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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