• 2024年8月7日

医師の美容系への流出について

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 2024年8月6日の産経新聞の「一筆多論」で佐藤好美論説委員が、「医師は美容系に流出か?」というコラムを書かれております。厚生労働省の幹部から、著名な形成外科医による「医大の卒業生5~6校分にあたる人数が毎年、美容医療系に進んでいる」という発言を紹介されたことが、執筆の契機であったようです。

 さて、コラムを読みますと、「美容医療自体を否定するわけではない」としつつも、「診療科ごとの医師の偏在や、地域による医師の偏在を、どう是正するかが長年の課題なのに、一方で医師が大量に美容医療に流出しているのでは話にならない」、「(医師の)育成には結構な公費も投じられているのに……釈然としない」、「医師の配置は……救命優先で決めてほしい」などと、現状に否定的なニュアンスが感じられます。

 たしかに、医師を含めた医療資源の配分は、あくまでも「生命>機能>審美」の優先順位に従うべきだとは思います。しかし、一方で、医師自身の価値観や人生観が、必ずしもこの優先順位に従うわけでもありません。やはり、美容外科医の方々は(広告目的も多分にあるのでしょうが)「キラキラした生活」を送っているようにみえますので、他科の医師が転身されても不思議ではありません。

 私の周囲にも、初期研修終了後すぐに美容外科に進んだ者、優秀な内科医でキャリアの円熟期にありながら美容外科に転身した者、精神科後期研修を中断して美容外科に転身した者などが複数名います。個人的にその理由を尋ねたところ、他科と比較しての収入の高さや緊急性の低さの他に、「現在の生活の延長線上に明るい未来が見えない」というものが挙げられました。

 人口減少時代に突入したわが国ですから、どの医療機関、どの診療科も人手不足ではあるのでしょうが、そこでの仕事を続けたくなるような魅力を打ち出せなければ、今後も医師の美容系への流出は加速されていくことでしょう。これからは、どの診療科や医療機関でも、仕事の魅力を積極的に発信しなければ人を集められない時代になっていくのかもしれません(以前は、ラグビー部→整形外科などのように、部活の人間関係の延長で自動的に進路が決まった時代もあったようですが。)。

 ちなみに、美容外科を中心とする医師数の推移については、ドクターコネクト様の「どうなる?2024年度以降の美容外科クリニック転職市場≪vol.1≫」というコラムが参考になります。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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