- 2024年9月2日
男性更年期に関する雑感
渋谷神泉こころのクリニックです。
本日、2024年9月2日(月)の朝日新聞では、男性の更年期障害が大々的に取り上げられており、総合面だけではなく、くらし面でも、鎌田實氏へのインタビューで「ミッドライフ・クライシス」の文脈の下、男性ホルモンの分泌量低下について触れられています。
今回の記事では、男性更年期の治療法として、カウンセリングをつうじた生活習慣の改善が前面に押し出されており、男性ホルモンの補充療法については触れられていません。男性ホルモンは、筋肥大などを目的とするドーピングにも用いられますので、乱用を誘発しないようにあえて情報を抑制しているのかもしれません。
もちろん、精神科領域でも男性更年期については以前から一部で注目されており、2009年に出版された「うつ病-知る・治す・防ぐ」(福居顯二著、金芳堂、2009年)でも詳述されています。同書では、治療法として男性ホルモンの補充療法が挙げられており、その治療例も紹介されています。とはいえ、男性ホルモンの投与に際しては、前立腺がんの有無など、泌尿器科でも経過をみるべき項目がありますので、精神科で補充療法を行っているところは少ないかと思います。
なお、薬物によるドーピングの弊害を詳しく学びたい方は、ANABOLICS 11th Edition (William Llewellyn, 2017) がオススメです。いろいろな有害作用が詳しく解説されていますので、安易に使用すべきではないこともよくわかると思います。
なお、男性化作用のあるホルモンの総称がアンドロゲン(男性ホルモン)であり、テストステロンはその代表的なホルモンのうちの一つです。わが国では、アナボリックステロイドや、蛋白同化ステロイドの呼称が一般的ですが、基本的には蛋白同化作用(アナボリック作用;要するに筋肥大作用、回復促進作用)と男性化作用(アンドロゲン作用)は不可分なところがありますので、海外ではアナボリック・アンドロゲニックステロイド(蛋白同化・男性化ステロイド)と呼ばれます。
ちなみに、ステロイドホルモンの合成経路や種類の概要は下図のとおりです。
余剰のテストステロンは、エストラジオールという女性ホルモンに変換されますので、副作用で女性化乳房になり得るのも納得できますね。
更年期からドーピングに話が逸れてしまいましたが、参考になれば幸いです。
それでは、また!