• 2025年3月1日
  • 2025年8月2日

11.武州千住

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 院内に月替わりで展示している浮世絵について、院内にもバックナンバーを含めた解説を置いております。とはいえ、あらかじめ解説を読んだうえで、来院時にじっくりと鑑賞したいとの御意見も頂戴しましたので、展示作品については、当ブログにも解説を掲載しております。

 令和7年3月は、「武州千住」です。

 武州とは武蔵国の別称であり、現在の東京都、埼玉県、神奈川県の一部(川崎市及び横浜市)に相当する地域です。千住は現在の足立区に相当し、奥州道中及び日光道中の初宿である千住宿が置かれていました。

 江戸時代、五街道の各々について、江戸・日本橋に最も近い宿場町は江戸四宿(えどししゅく)と総称され、千住宿(奥州道中、日光道中)の他には、板橋宿(中山道)、内藤新宿(甲州道中)、品川宿(東海道)がありました。

 とはいえ、本図で描かれているのは、この千住宿の宿場町としての賑わいではなく、千住宿の近隣にある元宿での、馬を曳く農夫と釣りに興じる二人による牧歌的な風景です。

 人物や風景に関しては、足立区立郷土博物館の解説がかなり詳細ですので、そちらをご覧いただければと思います(以下の解説及び記事も、同記事を参考に作成しました。)。

 画面の右側に大きく描かれているのは元宿圦(もとじゅくいり)に設けられた、元宿堰とよばれる堰枠(せきわく)で、隅田川から用水路への逆流を防ぐ役割を果たしていました。したがって、本図は元塾圦から隅田川を望んだ風景ということになるでしょう。現在の帝京科学大学入口交差点付近に相当し、実際に同地に記念碑もあります。下図の青線で囲まれた範囲が本図の風景で、馬と納付は矢印方向に進んでいるものと思われます(下左図は明治時代の迅速側図、下右図は現在の地図です。)。

 ちなみに、堰とは河川を横断する構造物、圦とは堰を貫く管(通路)という意味です。

 お楽しみいただければ幸いです。

 それでは、また!

渋谷神泉こころのクリニック
精神科・心療内科
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