• 2024年4月27日

障害者施設や精神科病院での暴力事件などに関する雑感

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 4月25日(木)の朝日新聞の夕刊で知りましたが、大阪府内の障害者支援施設で、施設職員から入所者への暴力事件があったそうです。

 精神科病院でもこうした事件がよくあります。

 精神科で発覚した主な問題事件 訴訟や個別過誤(内閣府ホームページ)o3-2.pdf (cao.go.jp)

 こうした事件では、加害者自身の気質や性向に原因を求めがちですが、実際には構造的な問題もあるように思います。

 少数の職員で多くの利用者様を担当する場合、そこでの関係性はどうしても管理的、よりはっきり言えば、支配服従的になりがちです。

 立場上、私が多く目にしてきたのは、精神科での長期入院の方々に対する「虐待」です。

 精神科病院の、特に慢性期の閉鎖病棟では、いわゆる「社会的入院」とされる方々が多く入院されています。

 こうした状況ですと、患者様も具体的な退院の期日や退院先の住居などが曖昧なまま、入院が長期化しやすく、入院中も日々の行動範囲が病棟内に制限されることがほとんどで、さまざまな「拘禁反応」が重畳しがちです。

 長い経過の中で担当医も変遷していることが多く、対応は安易な多剤処方や行動制限に陥りやすく、治療方針からも目標や計画性が失われがちです。

 当然、医師を含む職員から患者様への「虐待」的な対応が問題になることもありました。

 今回の障害者支援施設での事件についても、その状況や環境は精神科病院に類似している部分があると思いますので、他人事ではありません。

 石川信義氏や佐藤忠宏氏のような取組みが、一つの標準として展開されると良いのですが……。

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 私自身も個別にこうした問題の解消に取り組んできましたが、やはり、病院全体の体質や構造によるところも大きく、完全に解決することはできませんでした。

 「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ。」(わが国の精神疾患患者は、病気になってしまったことに加え、わが国の精神疾患患者への治療体制や処遇が適切でないという不幸も負っていると言えます。)という、呉秀三氏の言葉が胸に響きます(「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」より引用、()内は筆者の意訳。)。

 それでは、また!

 

 

 

 

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