• 2024年7月3日

パーソナリティ障害について④

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 パーソナリティのとらえ方について、クロニンジャーの理論は先天的な基盤となる気質因子と後天的に形成される性格因子の二つをうまく統合しているように思います。

 気質因子の各要素は、内因性精神病と考えられる統合失調症や一部のうつ病などとの連続性や、いわゆる発達障害との連続性も内包されているように思われ、これが最近主流になってきている「スペクトラム障害」の概念にも合致します。

 アメリカ精神医学会の作成する「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」では、DSM-IV(1994年)からDSM-5(2013年)への改訂にあたって、発達障害を「自閉症スペクトラム障害」や「自閉スペクトラム症」として、いわゆる「定型発達」との連続性を強調するようになりました。

 もう一つ、DSM-5では、統合失調症も「統合失調症スペクトラム障害」の一部であり、従来、性格的な問題であると考えられていた「統合失調型パーソナリティ障害」もそのスペクトラムに含まれるものとされました。

 元々、パーソナリティ障害でもA群は精神病的、C群は神経症的、B群はそれらの中間というような認識もありましたが、DSM-5 ではそれがより強調された形になっています。

 統合失調症は、脳内伝達物質の一つであるドーパミンの作用の亢進により発症するという仮説がありますが、クロニンジャーの理論による気質因子の一つにも「新規性追求」というドーパミン機能を反映したものが含まれます。また、うつ病の発症にもセロトニンやノルアドレナリンの機能の減弱が影響しているという仮説があり、これも「損害回避」や「報酬依存」に関連しています。

 このように、パーソナリティと統合失調症やうつ病などとの連続性についても、クロニンジャーの理論は示唆的なところが多分にあります。あるパーソナリティが、ある疾患の「病前性格」であるのか、その疾患の「初期徴候」なのかはなかなか断言できません。しかし、いたずらに本人の人格を責めるのではなく、ある疾患を想定した薬物治療を試行しようという発想につながり得る点で、このような視点をもっておくことは重要であると思います。

 とにかく、こうした問題の考察は複雑ですので、お悩みの方はまず一度御相談いただければと思います。

 それでは、また!

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