- 2025年1月18日
共通テスト・痴漢・広場恐怖症
渋谷神泉こころのクリニックです。
本日から明日にかけて大学入学共通テストが実施されます。
こうした受験シーズンになると、「テストに遅刻できない」という受験生の心理につけこみ、SNSなどで痴漢を扇動するような投稿が増加します。そのため、警視庁や各都道府県警でもこの時期は痴漢の取締まりを強化しています。
警視庁によると、2024年の痴漢検挙数は725件で、そのうちの約63%が電車内での被害だったということです。また、東京都が2024年に実施した痴漢被害をめぐる大規模な実態調査によると、女性の56.3%、男性の15.2%が、電車内や駅構内で痴漢被害に遭った経験があるとのことです。
加害者の中には、性嗜好障害という一種の依存症の状態に陥っている方もいるかと思います。この場合、刑罰だけでなく、治療も受ける方が再犯防止には有効です。罪悪感をもちながらも痴漢をやめられない場合は、医療機関への御相談をお勧めします。なお、性嗜好障害の場合、意思の力による自制は困難ですので、混雑する時間帯での公共交通機関の利用は控えることが賢明です。
さて、不安障害の一つに、広場恐怖症(アゴラフォビア)というものがあります。ここでいう広場とは、「逃げ出すことが難しい場所」、「すぐに安全なところに移動できない場所」といった意味で、人混みや行列の中といった開放空間、劇場や映画館の中といった閉鎖空間の他、電車やバスなどの公共交通機関の中なども含まれます。こうした状況で、パニックのような症状を繰り返したり、症状を誘発する場面を回避したりして生活に支障を来すものが、広場恐怖症です。
精神科・心療内科では、どこの医療機関でも多くの広場恐怖症の方が受診されているかと思いますが、やはり電車でパニック発作を起こす女性が大半である印象です。ほとんどの方が、発症の契機は不明と言われますが、電車内での痴漢件数が多いことを考えると、これが原因の一つであるようにも思えてきます(心的外傷体験を抑圧して、思い出さないようにしている可能性があります。)。
何かと物騒な昨今ですが、共通テストを受験される皆様が被害に遭わず、集中して試験に臨めることをお祈り申し上げます。
それでは、また!