• 2024年7月1日
  • 2024年7月2日

パーソナリティ障害について②

 渋谷神泉こころのクリニックです。

 パーソナリティ障害という概念がありますが、そもそも、パーソナリティとはどのような概念なのでしょうか。これもいろいろな定義がありますが、一応は、「長期にわたって比較的安定している思考、知覚、反応、対人関係のパターン」といった定義が妥当かと思います。日本語では、個性、人格、人柄などと言われるもので、ある小説家の「登場人物は、ある状況下でその人物がどのように振る舞うのかが、自然に予測できるまで作りこむことが大切だ。」といったニュアンスのことを述べていましたが、これもパーソナリティの側面を上手く表現したものだと思います。

 パーソナリティの構成要素や類型なども、さまざまなものがありますが、今回はロバート・クロニンジャー博士の提唱する「気質と性格の7次元モデル」を紹介したいと思います。

 この理論では、人のパーソナリティは、遺伝的な影響の大きい「気質 Temperament」と、環境的な影響の大きい「性格 Character」によって構成されているとされています。

 よく「遺伝か環境か」という議論が交わされますが、遺伝的な基盤と環境による修飾との相互作用により、人格が形成されるという考え方です。もちろん、この理論を絶対視する必要はありませんが、パーソナリティのとらえ方としては非常に参考になります。

 やはり、遺伝的、先天的、個人的な傾向というものはありますので、養育や教育などでは、それに沿ったやり方でないと、どうしても適応できない部分も出てくるでしょう。この可能性を認識する上では、「気質」の存在を想定しておくことが有効です。

 一方で、すべてが「気質」という遺伝的な要素で決定されてしまうとした場合、後天的な介入は無意味であり、さらには人間としての成長もあり得ないということになってしまいます。実際にはそのようなことはありませんので、「性格」の存在や重要性もきちんと認識しておくべきでしょう。

 孟子による性善説も、荀子による性悪説も、人の本質としての前提が善悪で相反するものの、教育や修行などで良い方向に成長できるという考え方は共通しています。

 人間は変わっていける、成長できるという視点と、人にはそれぞれ「しっくりくる生き方」もあるという多様性を認める視点とを両立させる意味で、クロニンジャーの理論には学ぶところが多々あるのではないでしょうか。

 ところで、初めて「クロニンジャー」の名前を聞いたときに、「え?黒忍者?」などと思ったのは私だけではない……ですよね(;^_^A

 それでは、また!

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